※ ポートフォリオ掲載用に、ブランド名とドメインを伏せています(内容は当時のまま)。

WEBSITE RENEWAL

誰に刺さるサイトにするかを、
ワイヤーフレームより先に決める ペルソナ設計の手法と、釣りギアブランド案件への適用

社内検討用のメモ。本文がペルソナという手法の説明、オリーブの囲みが当案件への適用。 01でなぜ作るか、02で何を設定するか、03でいつ作るか、04で当案件のペルソナ2人、05でそれをワイヤー・コピー・写真選定にどう効かせるかを並べている。

作成日:2026年7月29日 案件:W020 釣りギアブランド サイトリニューアル提案 種別:社内検討資料(クライアント提出物ではない)

このペルソナは想定である。実ユーザー調査・ヒアリング・アクセス解析・購買データはいずれも未取得。 材料は公開情報(公式サイト 各ページ)と競合4社の実読、および参考ブランド4件の情報のみ。 年齢・居住地・釣り歴などの数字は、層の性格を1人に固めるための象徴であり、実測値ではない。 本番案件であればここでヒアリングとアクセス解析を挟む。

関連資料:ペルソナ_ジャーニー_釣りギアブランド.md(元データ)/競合分析_釣りギアブランド.md(Step 0のターゲット層リサーチが不安項目の出どころ)/要件定義書_釣りギアブランド.md(②ターゲット定義に本資料の結論が入っている)/カスタマージャーニー_釣りギアブランド.html(本資料の続き)

01 WHY PERSONA

ペルソナが無いとどうなるか、有るとどうなるか

ペルソナは「架空の人物を作る遊び」ではなく、制作中に何度も発生する「どっちを優先するか」の判断を機械的に決めるための道具。

無い場合誰にも刺さらないサイトになる

  • デザインがふわっとする(判断基準が「なんとなく良さそう」しかない)
  • コピーが刺さらない(読み手の言葉ではなく、作り手の言葉で書いてしまう)
  • 導線が弱くなる(全部のリンクが同じ強さで並ぶ)

「誰にとってもいいサイト」は、裏返すと「誰にとってもそれなり止まりのサイト」。

有る場合制作の方針が先に決まる

  • 写真の選び方が決まる
  • コピーの言葉が決まる
  • 優先すべき情報の順番が決まる

大勢に良い印象を与えても、心が動かなければアクション数はゼロ。特定の層だけでも心が動けば数字は動く。

CASE

釣りギアブランドは資産が多すぎる側の案件。思想文・20年超の実績・釣法ノウハウ・商品カテゴリ39・ブログ・動画(タケダサロン)・イベント・アパレルが、すべて「載せる価値のあるもの」として存在する。

だから優先順位を決めないと、現行サイトと同じ「商品カテゴリの羅列」に戻る。削るためではなく、順番を決めるためにペルソナを置くのが当案件での役割。

02 WHAT TO DEFINE

設定するのは3つだけ(状況・目的・不安)

設定項目を増やすほど精度が上がるわけではない。設計判断に効く項目だけを埋める。

01状況

いつ・どこで・どの端末でサイトを見るか。

効く場所モバイル前提の判断・1画面に入れる情報量・読み込み速度の要求水準

02目的

何をしたくて来たか。

効く場所ファーストビューの内容・ナビの並び順・CTAの言葉

03不安

何が気になっていて、解消されないと動かないか。

効く場所安心情報の配置位置・FAQの有無・保証や発送の書き方

NG細かすぎる人物設定は作らない

趣味・血液型・愛読書・休日の過ごし方といった設定は、埋めても設計の判断が1つも変わらないため不要。 「この項目が変わったら、サイトのどこが変わるか」を言えない項目は落とす。

CASE

ペルソナAに「釣り歴25年・バスからシーバス、ライトゲームを経て磯ヒラ」と書いているのは趣味の描写ではなく目的と判断基準そのもの。 遍歴が長い人は道具の良し悪しを自分で判断でき、スペック表より開発意図を読みたがる。つまり商品ページの構成を「スペック表中心」から「開発ストーリー+実釣証明+スペック+買い方」へ変える根拠になる。

逆に、好きな音楽や家族構成の細部は書いていない。書いてもワイヤーが1mmも動かないため。

03当案件は、材料がすでに揃っている状態

ペルソナは無から創作するものではなく、調査で出た材料を1人の人格に固める作業。当案件は前工程で3点がすでに出ていた。

  • ターゲット:30〜50代の既存ファン層と、20〜30代のライトゲーム入門〜中級層(要件定義②) 人格主導型ルアーブランドの顧客は「開発者個人のファン」構造。競合4社も代表アングラーを軸に会員制度・限定販売でコア層を囲っている(競合分析Step 0)
  • 利用シーン:平日夜のスマホ、釣行の移動中、YouTubeや釣法名検索からの流入 情報行動はYouTube・SNS起点 → 公式サイトで詳細確認 → 公式EC or 取扱店(競合4社共通の観測)
  • 不安:限定品・少量生産品の買い逃し/自分に合う道具が分からない/個人ブランドECの信頼(保証・発送・返品) 公式サイトの小売店向けページに「大手メーカー品に比べ入手しにくいものや少量生産のものが多く」「完売してしまうこともございます」と明記。買い逃しは想像上の不安ではなく実際に起きる

CASE

3点が揃っている=ペルソナは「新しい発見を出す工程」ではなく調査結果を制作が使える形に固定する工程として置いた。ここで新事実を作り始めると、根拠のない設計になる。

03 WHEN TO BUILD

ワイヤーフレームより前に作る

ワイヤーフレームは「情報設計」、ペルソナは「優先順位の決定装置」。装置が先にないと、ワイヤーは載せたい情報で埋まる。

01

現状分析・競合分析 事実を集める。ここでは判断しない

02

ペルソナ(本資料) 集めた事実を1人に固める。優先順位の基準ができる

03

カスタマージャーニー その人の行動を時間順に並べ、点を線にする

04

要件定義 → ワイヤー → デザインカンプ 02・03を根拠に、置く順番と見せ方を決める

RULE作る人数は「性格が違う導線の数」で決める

1人で足りるのは、サイトの目的が1本のとき。ベリーベリー案件は「忙しい親の意思決定を助ける」の1本だったため、迷っている親を1人作れば十分だった。 人数を増やすほど「どっちを優先するか」が決まらなくなり、装置として機能しなくなる。増やすのは導線の性格が明確に別物になるときだけ。

CASE

釣りギアブランドは目的が二層。売上の主柱=すでにファンの層(課題は買い逃し)と、将来の裾野=釣法検索で初めて出会う層(課題は橋渡し)。 この2つは入口も読む順番も不安の中身も別物で、1人にまとめると必ずどちらかの導線が設計から落ちる。

優先順位はA>B。両者の要求がぶつかったらAを優先する(Aが売上の主柱のため)。たとえばFVで「初心者向けの説明」と「思想の宣言」が競合したら、思想を採る。

04 PERSONA

当案件のペルソナ(2人)

Aが売上の主柱、Bが拡張。どちらも想定であり、実ユーザー調査は未実施。

PERSONA A 最優先

藤本 剛ふじもと つよし

47歳/兵庫県明石市/妻・高校生の息子/製造業の技術職/釣り歴25年(バス → シーバス → ライトゲーム → 磯ヒラ)

すでにファン。売上の主柱。課題は「買い逃し」。

状況

  • 平日の夜、晩酌しながらスマホで代表の方のブログ・YouTubeをチェック
  • 週末の釣行の行き帰り(電車・車の助手席)に新作情報を見る

目的

「代表の方の新作・考えに触れたい。出たら買う」

  • 新製品・予約販売の情報をいち早く知りたい
  • 開発の背景・釣法の考え方を深く読みたい
  • イベントで本人に会いたい

不安重要度 高

  • 予約開始に気づけず買い逃す(過去に経験あり。これが最大のストレス)
  • 再入荷があるのか分からない
  • お知らせがブログ・SNS・サイトに分散していて追いきれない

判断基準

×価格:ほぼ判断材料にならない(代表の方の道具なら納得して買う)

代表の方が本気で作ったものか

買える機会を確実に掴めるか

行動トリガー

予約開始・再入荷の通知が届いた瞬間。迷いはほぼない。速く確実に買える導線だけが問題

離脱要因

  • 予約開始を知らずに完売していたとき(サイトへの信頼が下がる)
  • ログイン・カートの操作が面倒で、釣り場から買えないとき

PERSONA B 拡張

中村 悠人なかむら ゆうと

29歳/福岡市/IT系会社員/釣り歴3年(アジングから入門。SNS・YouTubeで釣法を研究するのが好き)

未来のファン。課題は「橋渡し」。

状況

  • 夜、YouTubeでアジング動画を見ていて「フロートリグ」の存在を知る
  • 「フロートリグ 仕掛け」「タケダ式フロートリグ」でスマホ検索して流入

目的

「もっと釣れるようになりたい。次のステップの釣法と道具を知りたい」

不安重要度 高

  • ガレージブランドの道具は自分にはオーバースペックでは
  • 量販品と何が違うのか。価格に見合うのか
  • 個人ブランドのECで買って大丈夫か(保証・発送・返品)

判断基準

釣法の解説が納得できるか(解説がそのまま商品の説得力になる)

開発者が信頼できる人か(実績・メディア掲載・スポンサー)

最初の1本/1個が明確か(選択肢が多いと買えない)

行動トリガー

釣法解説を読んで「この人から学びたい」と思い、解説の中で「この釣法のための道具」が自然に提示されたとき

離脱要因

  • 解説が商品ページに分断されていて体系的に読めない
  • どれを買えばいいか分からない(製品一覧に放り込まれる)
  • 会員登録を先に要求される

2人の関係:A=いま売上を作っている層、B=5年後の売上を作る層。サイトはAの取りこぼしを止めることを最優先にしつつ、Bが入ってこられる入口を同じトップページに用意する。 Bを別サイト・別LPに切り出さないのは、Bの信頼形成に効くのが「代表の方栄という人物と実績」=Aと同じ資産だから。

05 HOW TO USE

ペルソナの使い方(ワイヤー・コピー・写真選定)

作って終わりにせず、以下3つの判断でそのつど参照する。参照しない設定項目は作らない、が02の裏返しの理由。

01ワイヤーフレーム:この人が安心できる順番に並べる

ページの並び順を「サイト運営側が説明したい順」ではなく「その人の不安が解ける順」に組み替える。上から順に読んだとき、迷いが1つずつ消えていく構造にする。

CASE

Aの最大の不安は「気づけない」。よってFV直後に更新情報ハブ(新作・予約・再入荷・イベント)と通知登録を置く。従来のように「商品一覧を見に行けば分かる」構造にしない。

Bの入口は二層導線として同じ高さに並置する(「新作・予約を見る」と「釣法から探す」)。Bを下層に押し込むと、Bは製品カテゴリの一覧に落ちて離脱する。

結果として、トップは FV(思想+人物)→ 更新情報ハブ → 二層導線 → 実績・メディア → STORY → 製品カテゴリ → 釣法解説ハブ抜粋 → ブログ/MOVIE の並びになった。製品カテゴリが上に来ないのはペルソナの判断による。

02コピー:この人の言葉で書く

作り手の名詞(「当ブランドの特徴」「製品ラインナップ」)を、読み手の動詞・関心(「はじめてでも安心」「釣法から選ぶ」)に置き換える。

見出し

× 製品ラインナップ →  釣法から選ぶ/新作・予約を見る

通知の誘導

× メールマガジン登録 →  予約開始・再入荷を受け取る

商品ページ

× 商品スペック →  なぜこの設計になったのか

入門者向け

× おすすめ商品 →  この釣法の、最初の1本

CASE

Aは代表の方の言葉そのものに共感して買っている層。制作側が思想文を作文すると、Aにはすぐ「本人が書いていない文」と分かり逆効果になる。 よって思想部分のコピーは原文の引用のみとし、新規の作文を禁止した(「釣りは永遠に…」「あくなき探求を続けるフィッシングギヤブランド」「ルアー釣りがルアー釣りであるために」「不変と革新」等)。

制作側が書いてよいのは、案内・ラベル・導線の言葉(上の表の範囲)まで。この線引きはペルソナAの判断基準「代表の方が本気で作ったものか」から直接引いている。

03写真選定:誰の感情を動かす写真かで選ぶ

「きれいな写真」ではなく「その人が自分ごとにできる写真」を選ぶ。同じ品質の写真が2枚あったら、ペルソナが写っている側・ペルソナが行きたい場所が写っている側を採る。

CASE

Aに効く写真:磯・波・アングラーのフィールドカット(top-main)、実釣シーン(Profile-infish)、製品の機能美カット。代表の方という人物が写るカット(profile_drum)はSTORYの核。

Bに効く写真:釣法解説ハブの入口3枚(アジ・メバル・回遊魚)。魚種が一目で分かる写真=Bの検索意図とそのまま一致する。

トーンの基準:参考ブランド4件(SHAKUHUNTER/KEN-CUBE(ON THE WATER)/ペスカデポ/JINDAIJI MOUNTAIN WORKS)の共通文法=アースカラーの節度ある配色、写真は「使用シーンの空気」か「製品の機能美」に振り切る、というルールに合わせる。 方向はSHAKUHUNTER寄り(人の気配・親しみ)で、JINDAIJI MOUNTAIN WORKSの硬質なミニマルには寄せすぎない。

使用素材の最終的な正はトップページ制作契約の素材表(実素材30点・使用許諾済み)。本資料は「なぜその写真か」の根拠側を担当する。

04迷ったときの使い方(優先順位の決定装置として)

制作中に判断が割れたら「Aは何を先に見たいか」「Bはここで何を不安に思うか」に戻す。以下は当案件で実際にこの基準で決めた4件。

  • FVは製品カタログか、思想+人物か → 思想+人物(Aの判断基準が「本気で作ったものか」のため)
  • 第2のCVを作るか → 作る(通知登録)(Aの離脱要因が購入前ではなく「来訪前」に発生しているため)
  • 釣法解説を新設するか、ブログのままにするか → 新設(Bの最重要フェーズを受ける面が無いため)
  • 商品ページはスペック表中心か → 開発ストーリー+実釣証明+スペック+買い方(Aの納得とBの信頼を同じページで満たすため)

06 SUMMARY

この工程の結論

012人だけ作る

導線の性格が別物なのはAとBの2本。3人目を作ると優先順位が決まらなくなる。ぶつかったらAを優先する。

02Aの課題は説得ではない

Aはすでに買う気がある。必要なのは説得ではなく「気づける・すぐ買える」到達の設計。ここが一般的なECの設計と最も違う点。

03Bの課題は橋渡し

釣法の解説(学び)から道具(購入)までの橋が無い。解説を新設し、実績とFAQで個人ブランドECの不安を消す。

04次工程へ

このペルソナを時間軸に展開したものがカスタマージャーニー。どのフェーズに何を置くかは次の資料で決める。

未検証・本番案件なら確認したい3点

1. Aの実在比率:売上に占めるリピーターの割合、通知手段の希望(LINEかメールか)。購買データとアクセス解析で確認する。

2. Bの流入実態:釣法名での検索流入が実際にどれだけあるか。サーチコンソールの実データで確認する(現状は「比較まとめサイトがSERPを支配しているため釣法名で取るのが現実的」という推定まで)。

3. 買い逃しの実数:予約開始に気づかず買えなかった人がどれくらいいるか。問い合わせ履歴・SNSの反応から拾えると、通知機能の投資対効果を数字で示せる。

ことばの注

ペルソナ:サイトが狙う層を、判断に使える粒度まで具体化した架空の1人。制作中の優先順位を決めるための道具。
CV(コンバージョン):サイトで達成したい行動。当案件の第1CVは購入、第2CVは通知登録。
第2のCV:購入より手前にある軽い行動をCVとして設計すること。当案件では「予約開始・再入荷の通知登録」。
二層導線:性格の違う2人の入口を、上下でなく横並びで同じ高さに置く設計。当案件ではFV直下に配置。
ファーストビュー(FV):ページを開いた瞬間にスクロールなしで見える範囲。
ガレージブランド:大手メーカーに対して、少人数・少量生産で作る個人発のブランド。